タイガとの出会い

大阪の商店街にある一軒のバーから始まる物語。

2009年6月26日(金)

給料日も過ぎ、いつもは賑わう時間帯だが不思議なことにお客は少なかった。

最後であろう客を送りだし、オバタは奥にいるフジカワに話し掛けた。

『今日は暇ですね〜店長。いつもなら満席なのに。』

『そやなぁ…シンゴも来てないのになぁ』

『しかも雨降ってますよ。最悪っすね。』

『マジで!道理で客入り悪いわけやわぁ〜。多分暇やし、もう上がりいや。』

『そうですね。じゃあお言葉に甘えて上がります。』
と言いながらロッカーへ向かった。

フジカワも閉店の準備をしはじめる。時計を見ると午前12時を少しまわっている。

勢いよく入口の扉が開き、オバタが顔を出す。

『お先に失礼します。』

『お疲れさん。また明日。』

一人になった店内で黙々と作業を進める。
だいたい片付けも終わり、ゴミ袋を片手に店のシャッターを下ろした。

『すごい雨やなぁ…はよ帰ろ。』

とちょうど店の裏手にあるゴミ置場に走り出した。
ゴミを出し終え、家路を歩こうとしたとき微かな物音が聞こえた。

『んっ?』

振り向きゴミ置場に戻ってみると、小さなダンボールが目に入った。
興味本位で覗いてみると、雨でびしょびしょになり、小刻みに震えている一匹の子犬がいるではないか。